近年、R. Palanivel らは、心筋細胞におけるアディポネクチンが調節するグルコース取り込みに、RhoA を介したアクチン細胞骨格の再構成が担う役割について検討し、その結果を報告しました。アディポネクチンは、脂肪組織によって分泌されるタンパク質で、グルコースおよび脂肪酸の代謝を調節します。アディポネクチンは、心臓のエネルギー代謝を低下させる疾患である肥満およびII型糖尿病において、アディポネクチン受容体に結合するパートナータンパク質 APPL1 と協調して、これらの調節を行うことが知られています。本研究により、(全長と球状両方の)アディポネクチンが、アクチン重合およびグルコース取り込みの増加に関与する RhoA 活性を上昇させることが見出されました。アディポネクチンはアクチンと APPL1 の共局在を増加させることから、G/F アクチン比の変化には、APPL が関与する可能性が高いと考えられます。アクチン重合や RhoA シグナル伝達が阻害されると、アディポネクチンが介するグルコース取り込みが有意に減少します。これらの結果から、心筋細胞において、RhoA が介するアクチン細胞骨格の再構成は、アディポネクチンが調節するグルコース取り込みに必要であることが示唆されます。糖尿病では、グルコース取り込みの増加は心保護作用を示します。
本研究では、RhoA 阻害条件下で、心筋細胞における活性化 RhoA 量、G/F アクチンレベルやパートナータンパク質の変化を定量化するために、Cytoskeleton(サイトスケルトン/CYT)社の RhoA GLISA 活性化アッセイ(品番: BK124)、G/F アクチン in vivo アッセイキット(品番: BK037)、抗アクチン抗体(品番: AAN01)、細胞透過性 Rho 阻害剤(品番: CT04)が使用されています。