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Ral GTPase を調節する翻訳後修飾 CYTOSKELETON NEWS 2015年3月号

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CYTOSKELETON NEWS 2015年3月号 Ral GTPase を調節する翻訳後修飾

Ral GTPase を調節する翻訳後修飾

RalA および RalB GTPase は、細胞の運動性、形態、シグナル伝達、小胞輸送、エンドサイトーシス/エキソサイトーシスなどを調節しています。このような機能の調節は、癌の発生や転移に重要であることから1-4、Ral は発癌および転移に関与すると考えられています。どちらのアイソフォームも、Ras が仲介する腫瘍形成、転移、浸潤に不可欠です2-6。RalA と RalB は、 82%のアミノ酸配列が同一であり、かつ、エフェクターや構造的/生化学的特性を共有していますが4、細胞内局在やエフェクターとの相互作用が異なるため、発癌においてそれぞれ独自の機能を果たします2,4,7,8。Ral の局在、結合パートナー、機能などは、翻訳後修飾(PTM: post-translational modification)によって調節されます2,4,9-11。Ral の翻訳後修飾は、Switch 1およびC末端の超可変領域内で見つかっており、ゲラニルゲラニル化、カルボキシメチル化、パルミトイル化、リン酸化、ユビキチン化などが報告されています3,4(表1、2)。

ゲラニルゲラニル化

ゲラニルゲラニル化(GG: Geranylgeranylation)は、Ral の適切な膜局在化および機能に必要です12,13。ゲラニルゲラニル化された RalA と RalB は、どちらも細胞膜に局在しますが13、細胞膜以外での局在は異なることが報告されています11。どちらのアイソフォームも、ゲラニルゲラニル化のシグナルモチーフであるCAAXモチーフ(C=システイン、A=脂肪族アミノ酸、X=末端のアミノ酸)を末端に持ちます4。ゲラニルゲラニル化が起こると、修飾された末端のシステイン残基がカルボキシメチル化され、 AAX残基が酵素により切断されます4,14。CAAXモチーフではなく、システインが2つ並んだCCAXモチーフを発現する Ral タンパク質では、2番目のシステインが、カルボキシメチル化ではなくパルミトイル化されます4,15。CAAXプロセシング酵素は新薬開発のターゲットであり、Ral タンパク質が2種類の方法で修飾されることは、治療においてジレンマとなっています16,17。CCAXモチーフを有するタンパク質は、治療の影響を受けないからです。

システイン残基の変異やゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(GGTase I)の薬理学的な阻害により、ゲラニルゲラニル化を抑制すると、Ral の膜との結合および機能が阻害されます13。GGTase I 阻害剤は両方のアイソフォームをターゲットとしますが、阻害による効果が異なります13。GGTase I 阻害剤は、どちらか一方の Ral アイソフォームの細胞膜への局在化を阻害し、その結果、Ral GTPase は細胞質全体 および 核周辺領域に観察されます13。また、GGTase I 阻害剤は、in vitro において、様々な癌細胞株の増殖を有意に抑制し18,19、RalA の遺伝子破壊と同様の効果が示されています18。また、in vivo においても、GGTase I 阻害剤による抗腫瘍効果が報告されています19

表1 Ral アイソフォーム/翻訳後修飾(PTM)/酵素
Ral アイソフォーム 翻訳後修飾(PTM) 酵素 修飾される Ral のアミノ酸 参考文献
RalA リン酸化/脱リン酸化 AKA / PP2A Aβ Ser194 21
RalA リン酸化/脱リン酸化 不明 / PP2A Aβ Ser183 20
RalB リン酸化/脱リン酸化 PKC / 不明 Ser198 24
RalB リン酸化/脱リン酸化 PKC α / 不明 Ser192 9
RalB リン酸化/脱ユビキチン化 不明 / USP33 Lys47 26

Ser: セリン、Lys: リジン

表2 Ral の Switch 1 および超可変領域
RalA EDYEPTKADSY
ARKMEDSKEKNGKKKRKSLAKRIRERCCIL
RalB EDYEPTKADSY
TKKMSENKDKNGKKSSKN-KKSFKERCCLL

太字は Switch 1、その他は超可変領域を示す。
赤: 共通する配列、緑: リン酸化部位、紫: ユビキチン化部位

リン酸化

Ral アイソフォームは、in vitro において、それぞれ異なるキナーゼを介して異なるセリン残基がリン酸化されます。RalA は、C末端の S183 残基20 および S194 残基21 がリン酸化されると、活性化されます10,21。どちらの残基も PP2A Aβ によって特異的に脱リン酸化され、RalA 活性が低下します20。PP2A Aβの発現が低下すると、S194 および S183 のリン酸化が増加して RalA が活性化し、RalA を介した細胞の形質転換が誘導されます20。S183 をリン酸化するキナーゼはまだわかっていませんが22、S194 は Aurora A キナーゼ(AAK)によってリン酸化されます21。AAK を介して S194 がリン酸化されると、RalA が活性化される他に、活性化 RalA とエフェクタータンパク質である RalBP1 が細胞内膜へ輸送され、RalA/RalBP1 を介した下流のシグナルの増加が起こります10。例えば、リン酸化された RalA と RalBP1 は、ミトコンドリアやミトコンドリア由来の小胞に再局在化して、有糸分裂の際のミトコンドリア分裂につながるシグナル伝達系を開始させます23。RalA は、リン酸化されると、エクソシスト複合体である Sec5 や Exo84 ではなく、RalBP1 に優先的に結合します10。さらに、S194 のリン酸化は、in vivo および in vitro で、RalA の発癌における機能を調節します10,21。また、RalA は、PKA によってリン酸化されます(リン酸化される残基は未解明)22。AKA阻害剤は、in vitro において癌細胞の増殖を有意に抑制し18,19in vivo において腫瘍形成を抑制し19、癌細胞において RalA の活性化を阻害することが報告されています19

RalB は PKC によって S198 が24、PKCαによって S192 がリン酸化されます9in vitro では、S198 のリン酸化により RalB が活性化され9、細胞膜から細胞内小胞を含む9 核周辺領域への再局在化が起こり24、発癌における機能(足場非依存性増殖、細胞運動、アクチン細胞骨格のダイナミクスなど)が調節されます24In vivo では、RalB の S198 のリン酸化は、腫瘍の増殖や転移に必要となります24。さらに、S198 のリン酸化は、RalB のエフェクターとの相互作用を変化させます。リン酸化を模倣した RalB は、内膜で RalBP1 に優先的に結合しますが、リン酸化を起こらなくした RalB は、細胞膜で Sec5 に結合します。RalB のリン酸化状態により、小胞の細胞膜への輸送、結合、小胞のカーゴ(積み荷)タンパク質の放出が調節されます9

ユビキチン化

ユビキチン化は、プロテアソームによって分解されるタンパク質の目印となる他に、タンパク質の活性や局在化、および結合パートナーを制御しています。Ral アイソフォームは両方とも、活性化状態に関係なく、分解を引き起こさない方法で主にモノユビキチン化されます25。しかし、RalA は(RalB は異なります)、足場非依存的に非分解性のユビキチン化によって修飾されます。どちらの Ral アイソフォームも細胞膜や内膜に存在していますが、恒常的にユビキチン化された Ral コンストラクトは、 RalA の(RalB は異なります)細胞膜への濃縮を誘導し、細胞内で斑点状に局在します。RalA のユビキチン化は、細胞膜における脂質ラフトの濃縮を引き起こします。RalA は、微小領域である脂質ラフトにおいて脱ユビキチン化され、ラフトを介したエンドサイトーシスを引き起こします25。その後、一連のサイクルとして、脂質ラフトを介したエンドサートーシスにより、RalA のユビキチン化が促進され、エンドサイトーシスを阻害すると、ユビキチン化が抑制されます。Ral のユビキチン化部位の候補として、数種類のリジン残基が挙げられています25。RalB の Lys47 残基のユビキチン化は、エフェクターとの結合やその後の機能を決定します。RalB はユビキチン化されると、 Exo84 ではなく Sec5 に結合します。しかし、RalB は脱ユビキチン化されると、優先的に Exo84 に結合します26。Sec5 と結合すると自然免疫応答のシグナル伝達を仲介し、Exo84 に結合するとオートファゴサイトーシス(自己貪食)を仲介します26

まとめ

Ral GTPase は、様々な翻訳後修飾により、活性や細胞内局在、エフェクターとの結合、そして最終的には機能が調節されています。Ral タンパク質は、Ras を介した発癌に関与することから、Ral 活性をターゲットとした治療薬の開発が進められています27。Ral と下流のエフェクターとの結合を直接ターゲットにする他に27、翻訳後修飾の促進/抑制による Ral 活性の調節が試みられています。Cytoskeleton(サイトスケルトン)社では、この新規治療法の研究にご使用いただける Ral 活性アッセイや、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化などのPTMを特異的に認識するモノクローナル抗体をご提供しております。

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参考文献

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