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研究用

蛍光フィブロネクチンタンパク質を用いた特発性肺線維症の創薬 CYTOSKELETON NEWS 2013年3月号

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CYTOSKELETON NEWS 2013年3月号 蛍光フィブロネクチンタンパク質を用いた特発性肺線維症の創薬

蛍光フィブロネクチンタンパク質を用いた特発性肺線維症の創薬

全世界で500万人の患者が苦しんでいる特発性肺線維症(IPF;Idiopathic Pulmonary Fibrosis)は、生存期間中央値が3〜5年程度と言われています1,2,3。この線維性の疾患は、慢性炎症性の組織修復反応であると考えられており、結合組織の過剰な堆積という特徴が、器官の構造と機能の不全を引き起こします4。フィブロネクチン(FN)の原線維形成は、細胞が媒介するプロセスで、溶解性の血漿FNを不溶性のFNに変換します。この過程が、IPFの進行の中心的な役割を担っています5。FNは、2つのC末端がジスルフィド結合でつながった二量体の糖タンパク質として分泌されます。70kDaのN末端ドメイン、120kDaの中央結合ドメイン、ヘパリン結合ドメインHepIIなどの、複数の機能ドメインから構成されています4。これらのドメインは、段階的に細胞表面レセプターと相互作用しますが、その最初の段階として、インテグリンとHSPG(heparin sulfate proteoglycan:ヘパリン硫酸プロテオグリカン)という細胞表面レセプターと結合します(図1)4。この結合が、細胞の緊張を生み出すアクチン細胞骨格の再編成を引き起こします。また、FNが結合したレセプターのクラスター形成や移動により、FNダイマーがアンフォールドして拡張構造になることで、FN同士の相互作用のための結合部位が露出します4。原線維形成は、制御不能の線維症につながり、IPFのような悪性の管理不能な組織の成長を引き起こすこともあります4,6が、不溶性の細胞FNは、細胞接着、成長、移動、分化において重要な役割を果たしており、創傷治癒、結合組織の堆積4,7、胚の発生7など、回復や発生にとって必要なことでもあります。

フィブロネクチンマトリックスの凝集
図1 フィブロネクチンマトリックスの凝集(参考文献4参照)
(A)未結合のコンパクトFNダイマーと細胞膜レセプター
(B)FNの結合が、細胞骨格の再編成を誘導し、細胞の緊張を生み出します。その結果、受容体がクラスターを形成し、アンフォールドしたFNのFN結合部位が露出します
(C)FN結合部位の露出により、FN同士の相互作用が可能になります

 

IPFのための治療法や直接的な処置方法がない一方で、患者のQOL維持のため、非特異的な治療オプションとして、抗炎症薬ピルフェニドン、免疫抑制剤、副腎皮質ステロイド、アザチオプリン、酸化防止剤N-アセチルシステイン、補助的な酸素治療、肺リハビリテーション、手術などがあります3。加えて、最近、抗炎症薬のサリドマイドとマクロライドがIPFの治療薬として可能性があることが提案されています8,9。実際に、マクロライド系抗生物質による臨床試験において、嚢胞性線維症患者に対して長期間にわたる有用性が確認されました9。より直接的な治療法として、抗TGF-β化合物とFUDペプチドが期待されています4。マウスを抗TGF-β処理することにより、sclerodermatousGVHD(移植片対宿主病)における皮膚線維症、肺線維症を減少させました4。しかしながら、ヒトの系の硬化症に対する抗TGF処置の臨床試験PhaseI/IIは成功していません。F1アドヘシンタンパク質のFUDドメインの残基配列は、FNのN末端のFNIドメインに結合することにより、FNマトリクスの凝集を阻害します1-5。このドメインがFNが細胞レセプターに結合するのに重要であり4、FN結合ドメインが、線維症疾患の治療のための薬剤ターゲットとなりうることを証明しています。

FNマトリックスの凝集を調節するメカニズムがわかってくるにつれて、線維性疾患に対するより良い治療法を発見できる可能性も高まります。特定のモジュレーターによるin vivoでのFNの効果の増強又は抑制は、線維症の研究で特に興味を持たれています6。最近のハイスループットスクリーニング(HTS)メソッドの進歩により、FNの原線維形成に対するそれらの効果についての小分子ライブラリーのスクリーニングが容易になっています6。Tomasini-Hohanssonら6による分析では、FN原線維形成の読み取りを行うために蛍光標識FNを利用しています(Z値>0.5)。Tomasini-Hohanssonらのパイロット試験により4160種類の既知の生理活性化合物がスクリーニングされました。この研究により9つの化合物がFNの凝集を阻害することがわかりました。この9つの化合物は、4つのキナーゼ阻害剤(ML-9、HA-100、チロホスチン、メシル酸イマチニブ)、2つの癌細胞アポトーシス促進剤(piperlongumin、カンタリジン)、3つの生体アミンシグナリングのモジュレーター(マプロチリン、CGS12066B、アポスコポラミン)です。

HTS技術に蛍光標識FNを用いることで、FN原線維形成のさらなるモジュレーターが、線維症疾患の治療法の開発に役立つ可能性があります。サイトスケルトン社では、FN原線維形成を研究するためのローダミン、HiLyte488™、ビオチン標識したECMをご提供致します。

参考文献

1. Buck and Chojkier, 2011. C/EBPβ-Thr217 phosphorylation signaling contributes to the development of lung injury and fibrosis in mice. PloS One. 6: e25497.
2. Raghu et al., 2006. Incidence and prevalence of idiopathic pulmonary fibrosis. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 174, 810-816.
3. http://www.pulmonaryfibrosis.org/Prevalence
4. To and Midwood, 2011. Plasma and cellular fibronectin: distinct and independent functions during tissue repair. Fibrogenesis & Tissue Repair. 4: 21.
5. Pankov and Momchilova, 2009. Fluorescent labeling techniques for investigation of fibronectin fibrillogenesis (labeling fibronectin fibrillogenesis). Methods Mol. Biol. 522, 261-274.
6. Tomasini-Johansson et al., 2012. Quantitative microtiter fibronectin fibrillogenesis assay: Use in high throughput screening for identification of inhibitor compounds. Matrix Biol. 31, 360-367.
7. Pankov and Yamada, 2002. Fibronectin at a glance. J. Cell Sci. 115, 3861-3863.
8. Horton and Hallowell, 2012. Revisiting thalidomide: fighting with caution against idiopathic pulmonary fibrosis. Drugs Today (Barc.). 48, 661-671.
9. Cameron et al., 2012. Long‐term macrolide treatment of chronic inflammatory airway diseases: risks, benefits and future developments. Clin. Exp. Allergy. 42, 1302-1312.

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