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研究用

GEF を介した GTPase シグナル伝達の低分子阻害剤
CYTOSKELETON NEWS 2016年11月/12月号

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CYTOSKELETON NEWS 2016年11月/12月号 GEF を介した GTPase シグナル伝達の低分子阻害剤

GEF を介した GTPase シグナル伝達の低分子阻害剤

Ras および Rho ファミリー GTPase は、発生、成長、運動性、細胞内輸送、遺伝子発現、細胞周期などの複数の細胞プロセスを調節します1,2。また、これらの GTPase の機能不全は、数種類のヒト疾患(例: 癌、神経変性、細菌性病因)に相関します3-5。Ras および Rho GTPase は、他の GTPase と同様に、活性型(GTP結合型)と不活性型(GDP結合型)との間を往復します。グアニンヌクレオチド交換因子(GEF: Guanine nucleotide exchange factor)は、様々な生理的および病理的な細胞外シグナルに応答して、GDPからGTPへの交換を促進することにより、GTPase 活性を調節します1,2。GEFは、このような性質から治療標的とされていますが、低分子阻害剤が結合するためには、GEF(または GTPase)上には通常見られない疎水性ポケットが必要になります。最近になってようやく、GEF および GTPase 上に新しい結合ポケットが発見されました6,7。本稿では、この観点から、Ras(N-、H-、K-Ras)および Rho(RhoA、Rac1、Cdc42)GEFに直接結合して阻害する、低分子阻害剤について考察します。

Rho GEF

Trio は、RhoA、RhoG、Rac を活性化する、マルチドメインを持つ Rho GEF です。Trio のC末端ドメイン(TrioC)は RhoA を活性化し、N末端ドメイン(TrioN)は RhoG および Rac を活性化します8。ペプチドアプタマーのスクリーニングにより、初の Rho GEF 阻害剤である TRIPa(Trio inhibitory peptide a)が見出されています。この阻害剤は、TrioC の Rho GEF ドメイン(TrioGEFD2)に結合し8、TRIPα および TrioGEFD2 を共発現する COS 細胞において、TrioGEFD2 の触媒活性 および Rho の活性化を阻害します8 (表1)。また、ペプチドアプタマーのスクリーニングにより、発癌性の Rho GEF である Tgat(Trio-related transforming gene in ATL tumor cells)に対する初の阻害剤 TRIPE32G も見出されています9。TRIPE32G は、Swiss 3T3 線維芽細胞において、Tgat のGEF活性と形質転換活性を阻害します(表1)。ヌードマウスに、Tgat と TRIPE32G を共発現する線維芽細胞を皮下注射すると、腫瘍を縮小させ、腫瘍の成長や重量の増加を遅らせます9。Rho GEF である LARG(leukemia-associated Rho GEF)は、Gタンパク質を調節する RGS(regulators of G-protein signaling)ドメインを含む GEF で、Y16 化合物によって阻害されます10。Y16 は、LARGの DH-PH junction に結合することにより、LARG と RhoA の相互作用を抑制します(表1)。また、Y16 は、RhoAと、RGSドメインを含むGEFである p115 RhoGEF および PDZ RhoGEF との相互作用を阻害します。さらに Y16 は、MCF-7 乳癌細胞において増殖や移動、浸潤を阻害します10

Ras GEF

Ras 変異の活性化は、約 30% のヒト癌に関連しています。Ras の恒常的活性型変異が、GEFを介した活性化を必要とする理由はまだ解明されていませんが、Ras GEF 阻害剤の研究は現在も関心を集めています7。Ras GEF の中で最も多く研究されている SOS1 は、どちらも Ras の活性化に必要となる、Ras 交換モチーフドメイン(Ras exchanger motif domain)および CDC25 ホモロジードメイン(cell division cycle 25 homology domain)からなる触媒ドメインを有する、マルチドメインタンパク質です。これらのドメインには、Ras に結合するための触媒部位およびアロステリック部位が含まれます。触媒部位は GDP-Ras に結合し、GDP から GTP への交換を促進します7,11,12。触媒部位を直接標的とする低分子阻害剤のバーチャルスクリーニングが近年行われ、有望な候補化合物が数種類示されています13

SOS1の低分子阻害剤である NSC-658497 は、濃度依存的に、触媒部位に特異的かつ直接結合し(表1)、Ras と SOS1 との結合を競合的に阻害し、SOS1を介した Ras の活性化を抑制します13。さらに、NSC-658497 は、マウス線維芽細胞 3T3、ならびに、野生型の K-Ras ではなく発癌性の K-Ras 変異を特異的に発現する前立腺・肺・卵巣癌細胞において、EGF刺激による Ras の活性化、および下流のシグナル伝達と増殖を阻害します13。同じ研究グループにより14、SOS1を特異的に阻害する化合物がさらに2つ同定され、UC-773587 および UC-857993 と名付けられました。この2つの化合物について、さらに生化学的・構造的に解析し、薬理学的な研究を行ったところ、どちらの化合物も、マウス線維芽細胞 3T3 や様々なヒト癌細胞株において、EGF刺激による Ras の活性化を阻害することが示されました。しかし、各化合物は、濃度依存的に、SOS1のドメイン内のそれぞれ異なる部位に μM 単位の親和性で結合していました(表1)。また、どちらの化合物も、細胞株において Ras の活性化および下流のシグナル伝達を阻害しました14

表1 GEFを直接の標的とする薬剤
GEF 薬剤 結合親和性(Kd) 参考文献 #
TrioC Tripα NR*;TrioC を介する RhoA のグアニンヌクレオチド交換活性における IC50 は 4 µM 8
Tgat TripE32G NR*; Tgat を介する RhoA のグアニンヌクレオチド交換活性における見かけの阻害定数(Kiapp)は 2.4-12.4 µM 9
LARG Y16 80 nM 10
SOS1 NSC-658497 7 µM 13
SOS1 UC-773587 3.4 µM 14
SOS1 UC-857993 14.7 µM 14
TrioN ITX3 NR*; TrioN を介する RhoG のグアニンヌクレオチド交換交換活性における IC50 は 76 µM 15

*NR, 報告なし

Rac GEF

Rac は、他の Rho ファミリー GTPase と同様に、Trio や Vav1 などの複数の GEF によって活性化されます。TrioN に直接結合する阻害剤である低分子 ITX3 は、スクリーニングにより同定され、TrioN が誘導する RhoG と Rac1 のヌクレオチド交換を阻害し、TrioN が介する細胞形態の変化(例: NGFにより誘導される神経突起伸長)に拮抗します。ITX3 は、TrioN を介した Rac1 の活性化を阻害します(図1)15。Rac(および Cdc42)に対する GEF である Vav1 は、メラノーマおよび膵臓癌に関与しています16。プリン類似体であるアザチオプリン(azathioprine)は、抗炎症分子として知られていますが、現在は免疫細胞における Vav1 阻害剤としても認識されています。この報告の著者らは、膵臓癌細胞においても同様の研究を行い、アザチオプリンが、in vitroin vivo の両方で、Vav1 を介する癌細胞の浸潤や移動、および細胞外マトリックスの分解を阻害することを見出しました16

まとめ

GTPase の活性化は、様々な方法により阻害されます。そのうちの一つとして、GEFに低分子が直接結合し、GEFの GTPase への結合と、続いて起こる活性化(GDPからGTPへの変換)を阻害することが挙げられます。GEF(および GTPase)上の新規結合ポケットが発見されたことは、GTPase の阻害を目的とする創薬への大きな刺激となりました。Cytoskeleton社では、これらの研究にご利用いただける、様々な GTPase 活性化剤や阻害剤、精製 GTPase および GEF、細胞や組織ライセートで Ras / Rho GTPase の活性化を刺激し測定できる活性測定キットをご提供しております。

参考文献
  1. Jaffe A.B. and Hall A. 2005. Rho GTPases: biochemistry and biology. Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 21, 247-269.
  2. Heasman S.J. and Ridley A.J. 2008. Mammalian Rho GTPases: new insighs into their functions from in vivo studies. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 9, 690-701.
  3. Kasri Nadif N. and Van Aelst L.. 2008. Rho-linked genes and neurological disorders. Pflugers Arch. 455, 787-797.
  4. Vega F.M. and Ridley A.J. 2008. Rho GTPases in cancer cell biology. FEBS Lett. 582, 2093-2101.
  5. Aktories K. 2011. Bacterial protein toxins that modify host regulatory GTPases. Nat. Rev. Microbiol. 9, 487-498.
  6. Quah S.Y. et al. 2016. Pharmacological modulation of oncogenic Ras by natural products and their derivatives: Renewed hope in the discovery of novel anti-Ras drugs. Pharmacol. Ther. 162, 35-57.
  7. Shima F. et al. 2015. Current status of the development of Ras inhibitors. J. Biochem. 158, 91-99.
  8. Schmidt S. et al. 2002. Identification of the first Rho-GEF inhibitor, TRIPa, which targets the RhoA-specific GEF domain of Trio. FEBS Lett. 523, 35-42.
  9. Bouquier N. et al. 2009. Aptamer-derived peptides as potent inhibitors of the oncogenic RhoGEF Tgat. Chem. Biol. 16, 391-400.
  10. Shang X. et al. 2013. Small-molecule inhibitors targeting G-protein-coupled Rho guanine nucleotide exchange factors. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 3155-3160.
  11. Margarit S.M. et al. 2003. Structural evidence for feedback activation by Ras·GTP of the Ras-specific nucleotide exchange factor SOS. Cell. 112, 685-695.
  12. Sondermann H. et al. 2004. Structural analysis of autoinhibition in the Ras activator son of sevenless. Cell. 119, 393–405.
  13. Evelyn C.R. et al. 2014. Rational design of small molecule inhibitors targeting the Ras GEF, SOS1. Chem. Biol. 21, 1618-1628.
  14. Evelyn C.R. et al. 2015. Combined rational design and a high throughput screening platform for identifying chemical inhibitors of a Ras-activating enzyme. J. Biol. Chem. 290, 12879-12898.
  15. Bouquier N. et al. 2009. A cell active chemical GEF inhibitor selectively targets the Trio/RhoG/Rac1 signaling pathway. Chem. Biol. 16, 657-666.
  16. Razidlo G.L. et al. 2015. Targeting pancreatic cancer metastasis by inhibition of Vav1, a driver of tumor cell invasion. Cancer Res. 75, 2907-2915.

GEFタンパク質

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
SOS1 Ras GEF protein, Human詳細データ CYT CS-GE02 100 UG
[1 x 100 μg]
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SOS1 Ras GEF protein, Human詳細データ CYT CS-SOS1-B 1 MG
[1 x 1 mg]
販売終了
K-Ras4B Protein: wild-type, Human詳細データ CYT CS-RS03 1*100 UG
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Gタンパク質エフェクタータンパク質&キット

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品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
RhoGEF Exchange Assay詳細データ CYT BK100 1 KIT
[60-300 assays]
¥197,000
Dbs protein GEF domain - His tagged詳細データ CYT GE01-A 2*50 UG
¥85,000
Rho A His Protein: wild type, Human詳細データ CYT RH01-A 1*100 UG
¥120,000
RhoA His Protein: wild type, Human詳細データ CYT RH01-C 3*100 UG
¥211,000
Rho A His Protein: wild type, Human詳細データ CYT RH01-XL 1*1 MG
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Rac1 His Protein: wild type, Human詳細データ CYT RC01-A 1*100 UG
¥120,000
Rac1 His Protein: wild type, Human詳細データ CYT RC01-C 3*100 UG
¥211,000
Rac1 His Protein: wild type, Human詳細データ CYT RC01-XL 1*1 MG
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Cdc42-His Protein: Wild type, Human詳細データ CYT CD01-A 1*100 UG
¥120,000
Cdc42-His Protein: Wild type, Human詳細データ CYT CD01-C 3*100 UG
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Cdc42-His Protein: Wild type詳細データ CYT CD01-XL 1*1 MG
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活性化剤・阻害剤

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Rho Activator詳細データ CYT CN01-A 5*10 UNIT
¥61,000
Rho Activator詳細データ CYT CN01-B 20*10 UNIT
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Rac and Cdc42 Activator詳細データ CYT CN02-A 5*10 UNIT
¥61,000
Rac and Cdc42 Activator詳細データ CYT CN02-B 20*10 UNIT
¥220,000
Rho Activator II詳細データ CYT CN03-A 3*20 UG
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Rho Activator II詳細データ CYT CN03-B 9*20 UG
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Rho/Rac/Cdc42 Activator I詳細データ CYT CN04-A 3*20 UG
¥61,000
Rho/Rac/Cdc42 Activator I詳細データ CYT CN04-B 9*20 UG
¥170,000
C3 Transferase Exoenzyme Protein Clostridium botulinum , Unlabeled詳細データ CYT CT03-A 1*25 UG
¥61,000
C3 Transferase Exoenzyme Protein Clostridium botulinum , Unlabeled詳細データ CYT CT03-C 4*25 UG
¥211,000
Cell Permeable Rho Inhibitor (C3 Trans based) Clostridium botulinum , Unlabeled詳細データ CYT CT04-A 1*20 UG
¥61,000
Cell Permeable Rho Inhibitor (C3 Trans based) Clostridium botulinum , Unlabeled詳細データ CYT CT04-B 5*20 UG
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Cell Permeable Rho Inhibitor (C3 Trans based) Clostridium botulinum , Unlabeled詳細データ CYT CT04-C 20*20 UG
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