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アクチンメチオニン酸化: 動的制御の次の段階 CYTOSKELETON NEWS 2019年6月号

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CYTOSKELETON NEWS 2019年6月号

アクチンPTMの背景

アクチンは、十分に特徴づけられた、豊富に発現している必須の細胞骨格タンパク質です。その動的特性により単量体(G-アクチン)と重合体(F-アクチン)状態とを移行することができ、これは数々の細胞プロセスにおいて非常に重要です。アクチンの動態や機能は数々の内部刺激と外部刺激により制御されており、これらはアクチン結合タンパク質(ABPs)、シグナル伝達物質、および他のタンパク質により促進されます。また、現在ではいくつかの研究より、アクチン自体が翻訳後修飾(PTMs)により高度に修飾されていることが示唆されています。その上、特定アクチンのPTMsに特化した研究により、そのアクチン動態、ABP相互作用、およびアクチン依存性生理機能への影響について詳述されました 1,2)。例えば、アクチンN-末端アセチル化、リジンアセチル化、アルギニル化、SUMO化、およびユビキチン化を研究されてきました。ここでは、メチオニン(Met)44とMet47におけるアクチンの生理的酸化に関する現在の研究を紹介いたします。

アクチン酸化:メチオニンスルホキシドに焦点を当てる(MetO)

酸化分野では一般的にH2O2といった自然に形成された酸化体により誘導される病理学的酸化(酸化ストレス)に焦点をあてており、最初は、酸化は“有毒”であると仮説を立てられていたものの、現在では酸化は病理学的現象と生理学的現象の双方にとってのシグナル伝達機構であることが知られています 3)。活性酸素種(ROS)に関する研究のほとんどはチオールを基盤としたシステイン(Cys)修飾に焦点を当てています。これはアクチンに関しても当てはまるため、アクチン酸化に関する初期の研究の大部分ではH2O2処理を利用していました。これより、亢進したラグタイム、重合速度の遅延、重合レベルの低下によって明示されるようにF-アクチン含量や重合活性の変化といった結果が得られていました 4-6)。さらなる研究より、H2O2誘導性アクチン酸化はin vitroにおいて最初にCys374を標的とするものの、Met44、Met47、Met176、Met190、Met269、およびMet355を始めとするいくつかのMetを標的することが示されています 7)。MetO酸化は、in vivoにおいて正常条件またはストレス条件下において生じます。しかし、Manta and Gladsyshevらは、ROS誘導性MetO形成はin vivoにおいてMsrAなどの還元酵素の速度式に比べ非効率的に生ずることを報告しています 8)。したがって、in vivoにおいてアクチンのメチオニンが酵素的に酸化するのかどうかといった疑問は未だに解決されていません。Termanらによる精液の研究より、in vitroにおいて、酵素であるMICAL(CasL関連分子)のアクチンのMet44とMet47の酸化における役割が同定されました 9)。このin vitro研究より、線維切断や重合低減の両方を促進するためにはMet44におけるMetOで十分であることが示されました。さらに、ショウジョウバエにおいてMICALの過剰発現によりbristle formationが変形するもののM44Lアクチン変異体では低減するように、アクチンMetOの誤制御により重度の形態学上の影響が生ずることから、in vivoにおけるその役割が明確となりました 9,10)。近年の研究より、この機構が細胞質分裂の終末段階におけるアクチン脱重合化に必須であることが特定され、F-アクチンのMICAL-1酸化の生理学的役割が同定されました 11)。これらの研究により、アクチンの分子的機能、細胞機能、形態的機能に対するアクチンMetOのもつ生理学的重要性に光が投じられました。

アクチン酸化の制御機構

MICALは細胞内フラボタンパク質モノオキシゲナーゼであり、昆虫から哺乳動物にかけて保存されており、酸化還元(redox)反応の触媒として機能します 12)。哺乳動物では3種のMICALファミリメンバーが存在し、この全てがアクチンを酸化できるもののそれぞれ異なった動態を示し、空間的局在化や制御を行います 13)。Termanのグループは、MICALがアクチンと相互作用し、NADPHを補助因子としてアクチンをMet44とMet479において酸化することを示しました。Met44残基はアクチンのサブドメイン2のD-ループに存在し、これはアクチンサブユニット接触に必須です 14)。Met44は酸化されると、負に帯電してアクチン単量体間相互作用と干渉します。そのため、F-アクチン切断と脱重合が促進します。重要なこととして、DTTのような還元体はMICAL活性を変えないため、アクチンへのMICAL介在性効果はH2O2といった拡散性酸化体を通しては生じず、MICALはアクチンに非常に接近している必要があります 9)

近年の研究より、MICAL介在性のアクチンMetOはメチオニンスルホキシド還元酵素のSelR/MsrBファミリーにより反転することが発見されました。2つの研究グループがそれぞれ独自に、SelR (MsrB) がMet44とMet47の還元や正常アクチン動態の回復に原因となる酵素であることを同定しました 15,16)。これらの研究より、SelR/MsrBが選択的にMICALにより酸化されたアクチンを還元し、他のメチオニンスルホキシド還元酵素メンバーであるMsrAは関与しないことがわかりました。SelR/MsrBは特異的にR-異性体MetOを還元し、MsrAは特異的にS-異性体MetOを還元することから、彼らはMetO R-異性体と共にMICAL立体特異的にアクチンを酸化すると結論付けています。以上より、これらのデータはアクチンの特異的MetO制御を介したアクチン動態と細胞骨格形成を制御する、可逆的で特異的な酸化還元システムを説明するものと考えられます。

アクチン酸化の生理学

MICALsは遍在的に発現し、アクチンのMet44とMet47残基は非常に保存されていることから、この酸化還元制御の機構が全ての組織や細胞型においてアクチン機能を調節する上で卓越した役割を担うものと思われます。いくつかの研究では、MICALタンパク質が一連の組織や生物において生理学的にも病理学的にも役割を担うことに着目しています。しかし、これらの効果がアクチン依存性制御を介して促進しているか否かは完全には研究されていません 17)。以下にMICALがその特異的なアクチン制御に関連して有する著しい効果の例をいくつ挙げました。例えば、このような研究の一つに、MICAL-2を核のG-アクチンレベル制御因子として同定し、続いてMRTF-A/SRF転写制御、およびゼブラフィッシュにおける心臓発生の生理学的制御として同定したものがあります 18)。その他に、増殖因子や化学忌避物質がアクチンのMICAL制御に及ぼす影響を調査したものがあり、その結果、逆説的に化学忌避物質の効果が増殖因子シグナル伝達により増幅され、これが病理学的腫瘍増殖や治療への応答と同様に生理学的軸索ガイダンス制御へ顕著な影響を及ぼすことを見出しました 19)。最後に、MICAL-1はF-アクチン制御を介した海馬苔状線維結合の発生に重要であり、この生理学的プロセスは神経以上において重要となる可能性があります 20)。これらの研究などから、いくつかの特徴的な細胞プロセスにこのアクチンの小さな生理的MetOがもつ計り知れない効果に光が当てられています。

アクチンMet44とMet47生理学的酸化還元システム
図1 アクチンMet44とMet47生理学的酸化還元システム

まとめ

これらの研究より、この新規の可逆的酸化還元制御機構の同定を介して確実にアクチンPTM分野の発展に向けて著しい基礎を築くことでしょう。近年の研究より、アクチンのMICAL制御は多くのアクチン依存性細胞プロセスにおいて重要であると思われ、アクチン生物学においてこの酸化還元機構がどれだけ公汎しているか驚くことでしょう。同様に、アクチンのABP制御がいかに共同して機能するのか、また、アクチンMetOのように決定的なPTMsとは反対に機能するのかを特定することは興味深いことでしょう。近年の研究より、アクチン酸化とコフィリンが共同してアクチンを分解すること 21)が示唆されており、これはABPとアクチンPTMとの掛け合い応答が存在することを示しており、更なる検討を行う正当性が示されたといえます。研究者が疾患におけるMICAL酸化アクチンの役割を解読するにつれ、ROSと酵素的アクチンMetOとの相互作用をさらに検討することは興味深いことといえます。これらの種の疑問に取り組むために有用なMetOアクチンツールを有することで、研究者がアクチン生理学やMetOアクチンが各々の研究モデルにおいて役割を担うかどうかをよりよく理解することができるでしょう。Cytoskeleton社では、様々なMICAL-酸化型(MOX)アクチンツールをご用意しており、アクチン生物学に対してよりよく理解できるよう、この新規アクチン制御機構をご自身の研究へと組込むことをお手伝いしています。

参考文献
  1. Varland S. et al. 2019. Actin post-translational modifications: The Cinderella of cytoskeletal control. Trends Biochem. Sci. DOI: 10.1016/j.tibs.2018.11.010.
  2. Terman J.R. and Kashina A. 2013. Post-translational modification and regulation of actin. Curr. Opin. Cell Biol. 25, 30-38.
  3. Wilson C. and Gonzalez-Billault C. 2015. Regulation of cytoskeletal dynamics by redox signaling and oxidative stress: implications for neuronal development and trafficking. Front. Cell Neurosci. 9, 381.
  4. Hinshaw D.B. et al. 1986. Cytoskeletal and morphologic impact of cellular oxidant injury. Am. J. Pathol. 123, 454-464.
  5. DalleDonne I. et al. 1995. H2O2-treated actin: assembly and polymer interactions with cross-linking proteins. Biophys. J. 69, 2710-2719.
  6. Lassing I. et al. 2007. Molecular and structural basis for redox regulation of beta-actin. J. Mol. Biol. 370, 331-348.
  7. Milzani A. et al. 2000. The oxidation produced by hydrogen peroxide on Ca-ATP-G-actin. Protein Sci. 9, 1774-1782.
  8. Manta B. and Gladyshev V.N. 2017. Regulated methionine oxidation by monooxygenases. Free Rad. Biol. Med. 109, 141-155.
  9. Hung R.J. et al. 2011. Direct redox regulation of F-actin assembly and disassembly by Mical. Science. 334, 1710-1713.
  10. Hung R.J. et al. 2010. Mical links semaphorins to F-actin disassembly. Nature. 463, 823-827.
  11. Fremont S. et al. 2017. Oxidation of F-actin controls the terminal steps of cytokinesis. Nat. Commun. 8, 14528.
  12. Terman J.R. et al. 2002. MICALs, a family of conserved flavoprotein oxidoreductases, function in plexin-mediated axonal repulsion. Cell. 109, 887-900.
  13. Wu H. et al. 2018. The MICALs are a family of F-actin dismantling oxidoreductases conserved from Drosophila to humans. Sci. Rep. 8, 937.
  14. Grintsevich E.E. et al. 2017. Catastrophic disassembly of actin filaments via Mical-mediated oxidation. Nat. Commun. 8, 2183.
  15. Lee B.C. et al. 2013. MsrB1 and MICALs regulate actin assembly and macrophage function via reversible stereoselective methionine oxidation. Mol Cell. 51, 397-404.
  16. Hung R.J. et al. 2013. SelR reverses Mical-mediated oxidation of actin to regulate F-actin dynamics. Nat. Cell Biol. 15, 1445-1454.
  17. Wilson C. et al. 2016. Actin filaments-A target for redox regulation. Cytoskeleton (Hoboken). 73, 577-595.
  18. Lundquist M.R. et al. 2014. Redox modification of nuclear actin by MICAL-2 regulates SRF signaling. Cell. 156, 563-576.
  19. Yoon J. et al. 2017. Amplification of F-Actin disassembly and cellular repulsion by growth factor signaling. Dev. Cell. 42, 117-129.
  20. Van Battum E.Y. et al. 2014. The intracellular redox protein MICAL-1 regulates the development of hippocampal mossy fibre connections. Nat. Commun. 5, 4317.
  21. Grintsevich E.E. et al. 2016. F-actin dismantling through a redox-driven synergy between Mical and cofilin. Nat. Cell Biol. 18, 876-885.

MOX Actin Products

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Actin protein (rabbit skeletal muscle, >99% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL99-A 4*250 UG
¥58,000
Actin protein (rabbit skeletal muscle, >99% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL99-B 2*1 MG
¥70,000
Actin protein (rabbit skeletal muscle, >99% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL99-C 5*1 MG
¥139,000
Actin protein (rabbit skeletal muscle, >99% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL99-D 10*1 MG
¥266,000
Actin protein (rabbit skeletal muscle, >99% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL99-E 20*1 MG
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MICAL-Oxidized (Pyrene labeled) Actin Protein, Rabbit詳細データ CYT MXAP95 250 UG
販売終了
MICAL-Oxidized Actin Protein, Rabbit詳細データ CYT MXA95 250 UG
CYT社
MXA95
2*250 を参照
MICAL-1 Protein 6xHis, Human詳細データ CYT MIC01 2*50 UG
¥99,000
MsrB2 Protein 6xHis, Human詳細データ CYT MB201 2*50 UG
¥87,000

Actin Products

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Actin Protein (cardiac muscle, >99% pure), Bovine, Unlabeled詳細データ CYT AD99-A 1*1 MG
¥36,000
Actin Protein (cardiac muscle, >99% pure), Bovine, Unlabeled詳細データ CYT AD99-B 5*1 MG
¥148,000
Actin Protein, smooth muscle, >99% pure詳細データ CYT AS99-A 1*1 MG
¥36,000
Actin Protein, smooth muscle, >99% pure詳細データ CYT AS99-B 5*1 MG
¥148,000
Pre-formed actin filaments (rabbit skeletal muscle), Rabbit詳細データ CYT AKF99-A 1*1 MG
¥55,000
Pre-formed actin filaments (rabbit skeletal muscle), Rabbit詳細データ CYT AKF99-B 5*1 MG
¥196,000
Actin Protein (skeletal muscle, >95% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL95-B 1*1 MG
¥28,000
Actin Protein (skeletal muscle, >95% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL95-C 5*1 MG
¥111,000
Actin protein (rabbit skeletal muscle, >99% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL99-A 4*250 UG
¥58,000
Actin protein (rabbit skeletal muscle, >99% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL99-B 2*1 MG
¥70,000
Actin protein (rabbit skeletal muscle, >99% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL99-C 5*1 MG
¥139,000
Actin protein (rabbit skeletal muscle, >99% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL99-D 10*1 MG
¥266,000
Actin protein (rabbit skeletal muscle, >99% pure), Rabbit, Unlabeled詳細データ CYT AKL99-E 20*1 MG
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Actin Protein (platelet non-muscle, >99% pure), Human, Unlabeled詳細データ CYT APHL99-A 2*250 UG
¥64,000
Actin Protein (platelet non-muscle, >99% pure), Human, Unlabeled詳細データ CYT APHL99-C 1*1 MG
¥106,000
Actin Protein (platelet non-muscle, >99% pure), Human, Unlabeled詳細データ CYT APHL99-E 5*1 MG
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Actin Protein (rhodamine, platelet non-muscle), Human, Rhodamine Isothiocyanate詳細データ CYT APHR-A 4*10 UG
¥87,000
Actin Protein (rhodamine, platelet non-muscle), Human, Rhodamine Isothiocyanate詳細データ CYT APHR-C 20*10 UG
¥269,000
Actin Protein (rhodamine, skeletal muscle), Rabbit, Rhodamine Isothiocyanate詳細データ CYT AR05-B 10*20 UG
¥84,000
Actin Protein (rhodamine, skeletal muscle), Rabbit, Rhodamine Isothiocyanate詳細データ CYT AR05-C 20*20 UG
¥163,000
SiR-Actin Kit詳細データ CYT CY-SC001 1 KIT
[50-300 slides]
¥150,000
SiR700-Actin Kit詳細データ CYT CY-SC013 1 KIT
[35-200 slides]
¥150,000
Acti-stainTM 488 phalloidin詳細データ CYT PHDG1-A 1*500 UL
[300 slides]
¥64,000
Acti-stainTM 555 phalloidin詳細データ CYT PHDH1-A 1*500 UL
[300 slides]
¥64,000
Acti-stainTM 670 phalloidin詳細データ CYT PHDN1-A 1*500 UL
[300 slides]
¥64,000
Phalloidin; Fluorescent Derivatives (Acti-StainTM 535), Rhodamine Isothiocyanate詳細データ CYT PHDR1 1*500 UL
[300 slides]
¥64,000

Actin Biochem Kits

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Actin Binding Protein Spin-down Biochem Kit (for muscle)詳細データ CYT BK001 1 KIT
[30-100 assays]
¥220,000
Actin Binding Protein Spin-Down Biochem Kit (Non-muscle)詳細データ CYT BK013 1 KIT
[30-100 assays]
¥224,000
Actin Polymerization Biochem Kit, Rabbit詳細データ CYT BK003 1 KIT
[30-100 assays]
¥251,000
G-Actin : F-Actin In Vivo Assay Kit, Mouse詳細データ CYT BK037 1 KIT
[30-100 assays]
¥211,000

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